今回は建築の設計と法規について少し解説させていただきます。
皆さん、街中で下の写真のように頭が斜めに切り落とされたような建物を見た事はありませんか?

右の手前の建物の頭が斜めになっています。良く見ると奥に見えるマンションも斜め。
この様な形がなぜ生まれるかご存知でしょうか?
デザインされた上でこうなっているのでしょうか?
実はこれは建築基準法に定められている、「斜線制限」をクリアするために仕方なく、
この様な形になっているのです。
そうした中、平成14年の建築基準法改正に伴い新しい考え方が導入されました。
それが、天空率です。
凄く簡単に言いますと、ある場所から空を見上げた場合に、計画建物が視界の中で占める割合と、
斜線制限内に最大限の規模で建てたと仮定した建物(適合建物と言います)の占める割合を比べ、
計画建物の方が占める割合が少なければ良い、と言う考え方です。
(実際は建物以外の空の部分の比較をしています。なので天空率と言う名前です。詳しくは
こちらへ)
次の二つが実際に計算している図面です。

こちらが計画建物の場合の空が占める割合です。(91.69%)

こちらが適合建物の場合の空が占める割合です。(91.64%)
91.69-91.64=0.05%計画建物の方が空の割合が多いのでこれはセーフです。
この計画建物、実は斜線制限を超えた高さなのですが、
天空率を利用すると建物の頭を斜めにする事なく建てる事が可能になります。
頭の部分を斜めにするのはデザインとしての制約以外にも、
工事費のコストアップ等の事業としてのマイナス面も含んでいます。
さらには近隣住民の方にとっても日影になる時間が短くなるというメリットもあります。
建物の日影は東西に建物が長いほど、近隣に対しては大きな日影を落とします。
高層で細い建物の方が広範囲に日影を落としますが、日影自体も細くなるので、
日影になる時間は短くなる場合が多いです。
この事は近隣説明を行いましてもなかなか理解されないのですが。。。
とまぁ、最後は泣き言になりましたが、平成14年より以前にマンション等を計画し、
デザイン・収支等で折り合いがつかなく、事業が中止になっていた方、
再度事業を考え直すひとつのきっかけになるかもしれませんので、
中止になった事業計画の図面を確認してみてください。
建物の頭、斜めになっていませんか?(Oh)
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